Bravissimo! -牛田 智大-



10/9は近くの秋川キララホールで牛田 智大さんのピアノリサイタルを聴いてきました。

■Bravissimo!!
これまでの生い立ちなどよく知らないままリサイタル当日を迎えたのでしたが、想像を超えた見事なまでの技巧と、曲解釈への真摯な姿勢が滲む演奏表現にとても心打たれました。

■当日プログラム


演題はバッハとショパンの作品のみ。
郊外地向けのリサイタルらしく知られた曲が多く並びますが、”24の前奏曲ならば全曲” といった具合に密度の高い曲ばかりを取り上げています。”有名ワルツを数曲くらい”とお茶を濁すような興行要素は微塵もありません。そこに頂点を目指す気鋭の17歳のピアニストの志が痛いほど感じられるのです。

■鳴り止まぬ拍手
演奏はほとんどの曲が連続演奏でした。

指ならしの第1曲を終えて椅子から立ち上がり観客の拍手に応えた後は、第2曲 ショパン24の前奏曲、第3曲 バッハ(ブゾーニ編) シャコンヌ ニ短調までを一気に弾ききりました。時間にして50分程でしょうか。

第3曲の演奏が終った瞬間、集中の糸の途切れない演奏の質の高さに、抑えきれない感動の拍手が観客席から湧き起こりました。

この東京郊外のきわめて小さなホールに集った、どちらかといえばいつもは控えめな聴衆が休憩時間を通して演奏者のいないステージに拍手を送り続ける光景を初めて見ました。

休憩時間が終わり、まだ鳴り止まぬ拍手の中、舞台袖から登場した牛田 智大さんは、観客席に明るい笑顔で嬉しそうに応えますが、とても控え目な印象でした。誰もが好感するような応対でした。

■創り出す音楽空間
休憩時間後も多くは連続演奏でした。ショパンの練習曲(Op.25-5、Op.10-5)を弾き終え、そのままソナタ2番を弾き始めようとした時でした。「黒鍵」の演奏に感動した観客の一部が堪えきれずに拍手を送り始めました。すると、まさにソナタ2番を弾き始めようとする鍵盤上の両手の動きを止め、僅かに観客席を見やり「有難うございます」というように鍵盤に向かい小さなお辞儀をして、何事もなかったようにソナタを弾き始めました。会場は17歳のピア二ストが創る音楽空間に瞬時に引き込まれていくのです。

■求道者のように
ピアノに向かう姿は求道者のように見えました。17歳とまだ小さな体格ながら、フォルテではピアノが朗々と鳴り、波がうねるような強烈な響きが襲ってきます。かと思えば、葬送の第3楽章では鍵盤に顔寄せまるでお辞儀をするような姿勢で粒だった弱音を奏でるのです。ミスタッチは皆無と言っていいほどのそれらの音の響きは流れる川のようにごく自然に過ぎ行き観客を包み込むのです。

■さいごに
冒頭のポスターの写真ではまだ少年らしさの残る容貌で人気アイドルのような印象を受けます。事前に見ていたこのポスターの印象で、メディアに乗せられたアイドルピアニストを聴きに行くようなつもりで臨んだリサイタルでしたが、全くの誤認識でした。すでに青年の顔立ちとなりつつあり、求道者と見紛う内省的な大人の表情をした17歳でした。きっと数年を待たずチケットのまったく取れない頂点に立つピアニストの一人になることでしょう。

リサイタル当日は、Nコン全国大会の中学校の部と重なっておりました。もしNコン抽選が当たったらどちらに行こうか?などと不謹慎なことを考えていたことを今は大いに反省します。結果として幸い(⁈)にNコンの抽選はハズレて、牛田 智大さんの滅多に聴くことができないような圧巻のリサイタルを聴くことができました。私が今まで聞いたピアノリサイタルの中で最高レベルのものでした。

リサイタルが終わると年配のご婦人らが席を立ち上がり拍手し始めました。周りも立ち上がります。休憩時間中のカーテンコールに加えて、今度はスタンディングオベーションです。東京郊外のきわめて小さなホールに集った、どちらかといえばいつもは控えめな聴衆がですよ。これにも驚かされました。

追記

後日NコンはNコンで、楽しく録画鑑賞ができました。二兎を得て、きっと音楽には神さまがいらっしゃるのだと信じます。


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